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霊能者を名乗る男が現れたのは翌日午後の事だ。
僕は誰と顔を合わせるのも気まずくて
その時間まで部屋に引きこもっていた。
「和樹坊ちゃま――下で皆さんお待ちでございます」
「ああ、うん。いらしたね」
中川が僕を呼びに来たちょうどその時
屋敷へ続くスロープを昇ってくる一台の黒いセダンが窓から見えた。
「まるで霊柩車みたい」
「またそのようなこと」
「似たようなもんだろ?霊能者も死神も」
「いけません、坊ちゃま」
中川に窘められながら螺旋階段を下りてゆく。
と——。
「その通り。霊能者も死神も大差ないものですよ、坊ちゃん」
「あ……」
既に玄関に到着していた客人が
気まずい素振りもなく言って顔を上げた。
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