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「淫気です」
「陰気?」
「多分考えてる字とは違うな」
キラは玄関ホールに響く声を気にして僕を手招きする。
「淫乱の淫、淫蕩の淫の字です」
「淫気か――」
それで僕だと分かるとは。
なんて言われようだと思いつつ否定も出来ずに僕は肩をすくめた。
「あなたみたいな淫気を纏っている人そうはいませんよ」
「褒めてる?貶してる?」
「ああ、ごめんなさい」
キラは素直に詫びて茶色い髪をかき上げた。
額がのぞくと別人みたいに賢そうに見える。
「それでね……なるほど……」
「何?」
そんなキラは僕の背後に視線をやって
納得したように一人何度も頷く。
そして言った。
「今この屋敷に起こっている騒動——全容が見えてきましたよ」
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