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episode252 お父様の亡霊
「食堂に犬を入れるんですか?」
「悪いな——こいつは特別なんだ」
長い尾を揺らしながら
キマイラが先頭に立って食堂に入っていく。
と当然のように。
当主席に腰を下ろした征司の隣にはべった。
「座ろう」
九条さんが僕の椅子を引いてくれる。
「おっと、ごめん」
拳銃の引き金を引くような音がした。
「ちょっと、なんであんたがいるのよ?」
ちょうどいいタイミングでやってきた女王様は
僕の姿を見るなりあからさま眉を吊り上げる。
「あなたがあの世に送り損ねたからじゃないですか」
スカーレット・オハラみたいな高慢ちきな眉。
「ま……!」
仕方なく妻の椅子も引いてやる九条さんが見てない隙に
僕は思い切り下品な顔で舌を出しそっぽ向く。
「そういえば椎名さんはどうしました?」
僕はようやく思い出し征司に向き直る。
「まさか怪物の食い物になったのでなければいいけれど」
言うと床に伏せたキマイラが
目玉だけぎょろりと動かし僕を睨んだ。
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