3時の猫

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あの怖かった過去の出来事は今でも忘れない。犯人は逮捕されたが、心に残った傷は大きいのだ。何時までも忘れられないかもしれない。 私は群馬県の小さな町で20歳の時から母の経営しているスナックで働いている。定休日の日曜日を除いて、19時から午前の2時までそこで接客業をしているのだ。比較的広いスナックでカウンターには10人程、ボックス席には20人位が座れるようになっている。広い店なので忘年会や新年会に使ってくれるお客さんも多い。今日は近所の総合病院の内科が新人の歓迎会で団体で入ってくれた。有難い限りだが、こういう日はとても疲れてしまう。私はカウンターに来てくれた常連さんの勧めでブランデーを飲みながら働いていた。いつもは家に帰るのは午前の3時位になる。家に着く頃には泥酔している事が殆どだ。 「華ちゃんは25歳だろう。もう結婚した方がいいんじゃない?相手はいないの?」 常連さんに揶揄われる。 「いないですよー。彼氏とも別れたばっかりなんです」 「じゃあ、僕なんかどう?」 「冗談言わねいでくださいよ」 「そうだよね。僕みたいに小さな会社の従業員より、今来ている病院のお医者さんみたいな高収入の人の方がいいかもね」 「そんな事ないです。私は真面目な人が好きなんです。小林さんは誰でも声を掛けるでしょう」 「そんな事無いよ。僕は華ちゃん一筋だよ」 小林さんと顔を見合わせて笑い合う。
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