グッバイ マイ アンブレラ

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
バス停に到着すると、私は傘さんを閉じた。いや、閉じようとしたがうまく閉じなかった。 いつもはカチッという音が鳴るのに今日は鳴らない。開けてよく見ると、骨が一本曲がってしまっている。 おそらくそのせいで家を出る時もきれいにたためていなかったのだろう。 雨水をはらうために小刻みに振ると、中途半端に閉まった傘さんがゆるゆると開いていくのを見るとなんだか物悲しい。 とりあえず私はできるところまで傘さんを閉じ、開かないように留め具で固定した。 腕時計を確認すると時刻は7時 12分。バスが来るまではあと2分しかない。家までは片道6分かかるので今家に戻って傘さんを置いてくるとすると確実に次のバスに間に合わないし、何より面倒くさい。だが1限の授業には 7 時 42 分発のバスに乗れば十分に間に合う。 迷っているうちにバスが到着したので私は調子のよくない傘さんを持ってバスに乗り込んだ。 家からバス停まで約 6 分、バスに乗車する時間が約 40 分、バス停から大学までが十数分。 約 1 時間の登校時間の中で空模様に変化が訪れないかと少し期待するも、雨は変わらずしとしとと降り続け、道行く人の半数は傘を差し、もう半分は差さないという状況が続いていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!