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教室に入ると、まだ人は少なめで比較的ゆったりと座って傘さんを安全なところに引っ掛けることができた。いつも何となく一緒に座るクラスのメンバーは見当たらなかったので一人で座っていると、周りに続々と知らない人が座り始め、後からばらばらとやってきたクラスのメンバーは私に気づかずに違うほうへと行ってしまった。
今日は傘さんがいるからいっか。と開き直り、一人で授業を受ける。これほど傘さんがいてくれてよかったと思ったのは、これが初めてかもしれない。
授業が終わって外に出ると、またパラパラと雨が降っていた。ゆがんだ傘さんを開くと、また元のきれいな形に戻った。傘袋は大事に持っておくことにした。
2限の教室は南構内の中でも一番南にある。この時間の移動は一週間の中で一番遠い教室移動なのである。
傘や自転車が入り乱れる中を早歩きして教室にたどり着き、傘さんを閉じる。ゆがんだ傘さんは再び元の傘袋に押し込められる。
2 限後から5限までは雨がほとんど降っていなかったのと教室移動が比較的近かったのもあり、何事もなく過ぎていった。変わったことといえば水がたくさんたまった傘袋を捨ててしまったことぐらいだ。
5限が終わると、また雨が降っていた。サークル活動のある私は再び本部構内へと戻っていく。
サークル活動は 9 時頃まであるのでそれまではご飯が食べられない。私はお菓子を買っていこうと思って本部構内のショップに寄った。入り口には傘袋が置いてあったので、傘さんを傘袋に入れた。すでに傘さんはかなり歪んでいた。
ショップに入るとおいしそうなスイーツがたくさん並んでいて迷ってしまう。が、結局 150円以上のものには手を付けないことが私の吝嗇さを物語っている。
100 円のチーズスフレを購入した私は意気揚々とショップの外に出た。
これから訪れる悲劇なんてこれっぽっちも予想していなかった。
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