グッバイ マイ アンブレラ

傘袋から取り出した傘さんを広げると、さっきまではきれいに広がったはずの傘さんがゆがんでいる。よく見ると骨と皮の部分の結合が外れている。はめなおしても開いたときにとれてしまう。傘さんの崩壊が始まってしまったのである。
とりあえず私は結合が外れてしまった傘さんとともに活動場所である文学部棟へと向かった。
文学部棟の前にたどり着き、傘さんを閉じると、修復が不可能といってもいいほど複数本の骨が曲がってしまっていた。スリムだった傘さんは一日の度重なる開閉を通して肥満体型と化してしまった。
私がゆがんだ傘さんを傘袋に押し込めていると、近くにやってきた留学生らしき男の人が周りを気にせずに傘を大きく振って水滴を飛ばして去っていった。それらをもろにかぶった私と傘さんは今日はなんと不運な日なんだろうと思いながら教室へと入っていった。