175人が本棚に入れています
本棚に追加
寮の裏には小さな庭があり、そこにベンチもある。
そこに座りまだ明るくなり切っていない空を眺める。
(まだ僕は、進めないままなのか…)
先程みた夢を思い出してため息をついた。
その時、近くで人の気配がした。
(…近づいてくる?)
また面倒くさいことになる前に、この場を立ち去ろうか。
そう思考を巡らせた時、向こうの人物が僕に気がついた。
「…誰かと思えば、”アリス”じゃん」
今の学園で僕のことをそう呼ぶ人は、体裁を加える側の人間だ。
「やっと顔見てわかったよ」
──ハッ
そうだ、どうせこんな時間だからと思ってマスクをしないで外に出てしまった。
数分前の自分を恨む。
俯いてできるだけ顔が見えないようにして立ち上がる。
「え、どこいくの?折角だし少し話そうよ」
話すことなんて何も無い。
どうせ暴言や罵り、嫌味に決まってる。
(なんなんだこいつは)
横を通ろうとした時、腕を掴まれた。
咄嗟に振り払い、つい顔を上げてそいつの方を見てしまった。
(あっ…この人は…)
「やっとこっち見た、久しぶりだね”アリス”」
「あお、先輩…」
最初のコメントを投稿しよう!