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「戻ってきてたんですね」
「うん、5日前くらいかな?日本に帰ってきたのは」
「おかえりなさい」
「ただいま、アリス」
この人は西園寺 葵先輩。
この1年、海外に留学をしていた人だ。
留学する前は何かと僕を気にかけてくれて、良くしてくれた先輩だ。
僕が今の状況になる前にお世話になっていた人。
だからあお先輩は今の僕の現状を知らないはずだ。
話さなきゃ…いけない…。
これ以上この人に迷惑をかけられないから。
「それで、さっきアリスが怯えていたのと、今のこの学園の出来事は関係あるんだね?」
その問いは質問なんかじゃなかった。
答えを知っていて、確認するための言葉。
(…知られていた)
この人も軽蔑、するんだろうか…。
今まで誰に軽蔑されても、そこまで深く考えなかったけど、この人にされるのは少し、悲しいかもしれない。
「アリス、君は…」
(次の言葉は今まで散々言われてきた言葉だ、大丈夫、大丈夫…)
──ギュッ
「よく耐えてきたね」
「…え?」
思っていた反応と違っていたから、驚いてしまった。
「もう、大丈夫だよ」
いいこいいこ、そうやってあお先輩は頭を撫でてくれた。
前から、この人には触られても平気だった。
優しくて包み込んでくれるような、そんな安心感がある。
「あお、先輩…、僕に何があったか知ってるんですよね…」
「うん、知ってる」
「じゃあなんで…」
あお先輩は優しく微笑んだ。
「俺はアリスの味方だからだよ」
柄にもなく泣きそうになった。
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