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───食堂
「え!!西園寺先輩!?」
「帰ってきたんだ!!」
「久しぶりの先輩だー!!」
「やっぱりかっこいい!」
「なんでアリスが横にいんだよ」
「まじありえない!身の程を弁えなよ!」
(やっぱり、あお先輩は人気者だな…)
味方って言ってくれたのは嬉しいけど、やっぱり…。
「アリス、気にしちゃダメだよ」
「えっ…」
「アリスの考えてる事なんてすぐ分かっちゃうんだから」
そう言って頭を撫でられる。
(バレてた…)
嬉しさと、若干の気恥しさを感じた。
「お、おい!紘のこと”アリス”って呼ぶなよ!紘が嫌がるだろ!!」
「…あと、手も退けろ」
そう言ってきたのは、転入生と氷室玲二で。
前に僕が言ったことを気にして言ってくれたようだった。
「あっ、それは…この人は」
「へー、君たちアリスにそれ言われたんだ」
僕の言葉を遮って先輩は口を挟んだ。
「そ、そうだよ!本人が嫌がることすんなよ!お前もアイツらと同じなのか!」
「本人の嫌がること、ねぇ…」
そう呟くとあお先輩はこちらを向いて微笑んだ。
(何をする気だ?)
この人がこんな笑い方をする時は、何か企んでる時だ。
「ねぇ、アリス…おいで」
そういって両手を広げた。
(これは…)
自分から動けってことか…。
「はぁ…」
1つ、ため息をついて、先輩の企みに乗ることにした。
なんだかんだ、この人に僕は逆らえないのだ。
──ギュー
先輩に後ろから抱きしめられる。
「…お前、こいつなら大丈夫なのか」
氷室玲二に聞かれる。
「うん、この人は大丈夫」
「…そうか、ならいい」
そう言ってテーブルに歩いていく。
頭の上で満足気な先輩の顔が浮かぶ。
そして、まだ納得のいってないやつが1人。
「なっなっなんで!抱きついてるんだよ!」
「これはアリスから来てくれたんだよ」
「だからその、”アリス”って言うのやめろよ!」
「なんで?アリスはアリスでしょ?俺が付けたあだ名なんだからいいじゃん、ねーアリス」
「おれが、付けた?」
「はぁ…」
(この人はこんなに独占欲が強い人だったか…?)
「そうなのか?紘」
「先輩の言う通りだよ」
「紘は嫌じゃないのか?」
「この人は特別だから」
「とくべつ…」
そう言うと嬉しそうなあお先輩と、対照的に落ち込んだ様子の転入生。
(何をそこまで落ち込む必要があるんだ)
僕はこの転入生を一生理解出来ないかもしれない。
…しようとも思わないけど。
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