株式会社ティータイムサービス

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

株式会社ティータイムサービス

今日のおやつは何にしよう。朝起きてから考える。お昼ご飯も夕ご飯も考えるけど、なんでか3時のおやつを考えるのはワクワクするんだよね。 仕事はなし、誰かと会う約束もなし。ひとりきりのマンションの一室でぽっかり空いた時間。ノートパソコンを出して気ままにネットサーフィンをしていたら、妙なサイトを見つけた。 「今日の3時のおやつ決まっていますか?」 私は何度かまばたきをしてから、イエスかノーの選択肢があるクリックボタンに気がついた。 「ノーっと」 クイズやアンケートに答える感覚で気楽にぽんっと押す。すぐに別の質問が表示される。 「外で食べたい?家でゆっくり?」 今日の気分はどうだろうかとしばらく考える。外で食べたい気もするけど、家でのんびりしたい気もする。散々迷って、外で食べたいをクリック。今度はイラストが数枚表示された。 「森の中でくまさんの焼き菓子、海で人魚と冷たいサンデーやパフェ、チャイナタウンに似た場所で中国茶とお菓子、日本庭園を眺めながら和菓子とお茶」 他にも魅力的な場所やシチュエーションが表示されている。ずいぶん凝った演出をするんだな。どこかのテーマパークだろうかと思いながら、魔女とつくる魅惑のトリュフをクリックした。そういえばちっともお菓子作りをしてないな。クリックした後数秒経ってから、ぽんっと四角い手紙の形をしたクリックボタンが表示される。ぼんやりとしていた私は思わずクリックしてしまった。 「マズイ。もしかしたら詐欺か何かかもしれない」 焦っている私の目の前に、簡潔な文章が現れた。取り消しできないかいざとなったら警察かどこかに相談できないかと考えながら、恐る恐る読み進める。 「ご注文承りました。魔女ディーゼル様から承諾を得られましたので、今日の午後3時にお迎えに参ります。お支払いにつきましては、魔女ディーゼル様より美味しい紅茶を持ってきていただければとのことです。それでは素晴らしい、ティータイムをお過ごし下さい。株式会社ティータイムサービス」 きょとんとしていた私は慌ててノートパソコンの画面、右下に表示されている時刻に目を向ける。ちょうど午後1時。お昼ご飯も食べずにネットサーフィンをしていたらしい。しばらく考え込んでから、近所の喫茶店で軽い軽食をとり紅茶を買いに行くことに決めた。 「私、頭おかしいかもしれない」 たった一人でネットサーフィンしているからだと頭を振り、でももしかしたら本当に午後の3時に迎えが来るかもしれないという考えが頭をよぎる。 あるわけない。そんなことあるわけない。でも、本当になったらどうしよう? 警察に連絡することも考えながら、戸締りをして部屋を出て行った。 例え何もなくても美味しい紅茶は私が飲めば良いんだもんね。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!