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俺と翔琉は、このカフェのこの席で出会った。
かれこれ、もう半年以上前。
まだ、俺が高校生バイトだった頃のことだ。
自然とこの奥の席は、常連客の間でも龍ヶ崎翔琉の席と認識され、彼が訪れるであろうディナータイムは暗黙の了解で空いていた。
だが、目の前の男は新入りだ。
この暗黙のルールをどうやら知らない様だ。
丁度その時、店内入り口がざわめき立つ。
30代半ばのイケメン店長が、慌てて俺の所へ駆け寄り耳打ちする。
龍ヶ崎翔琉が来た、と――。
慌てて俺は、入り口の方へ振り向くと顔こそ無表情であったが、とてつもない殺気立ったオーラーを放つ翔琉が立っていた。
げ……!
嫌な予感しかしない俺は、思わず新入り客の方へと向き直ってしまう。
「颯斗、何してるんだよ!早く龍ヶ崎様のところに行かないと!」
店長がヒソヒソ声で話す。
「でも、俺……この方に、先程ご指名頂いたばかりで……!」
こちらもヒソヒソ声で、でも少しだけ声を荒らげて答主張する。
「どうかされましたか?」
2人のコソコソしたやり取りを見兼ねた目の前の男は、優しそうな口調で話し掛けてきた。
本当に育ちの良さそうな話し方だ。
「……お客様。大変申し訳ございませんが、こちらの高遠には既にご指名頂いている先客がいらっしゃいまして……もし、宜しければ店長の私が承らせて頂きますが……」
畏まって店長が伝える。
「え、そうなんですか?僕の方があの方より先に来たと思うんですけど……」
1歩も引く様子無く、男は答える。
「大変申し訳ございません。あちらのお客様は、以前よりずっと高遠を贔屓にして下さっている上得意様でして……」
2人で頭を下げながら状況を説明する。
「あ、そうなんですか。じゃあ、僕もこの店に沢山貢献すれば、高遠さんを優先的に指名できるってことですね?」
日本人特有の奥ゆかしさや謙虚さを持ち合わせていないような堂々たる提案に、内心俺は唖然とした。
龍ヶ崎以外にも、こんな男がいるなんて!
一体、どこの誰なんだ?!
背後に更なる危険なオーラを感じ取った俺は、素早く一礼して、目の前の男より翔琉の元へと駆け込んでいたのだった――。
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