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絵を描きたいと意思表示をした彼に紙とペンを渡すと、早速ペンを走らせた。 絵に描かれていくのはバラバラの位置にひたすら何かのかたまり、かたまり、かたまり、、、 「これは何かな?」 質問しても答えはなく、無心に描き続ける。その姿のなんと美しいことか。姿勢を一切崩さず視線だけ紙に向け、止まることなくペンを走らす。呼吸や瞬きも相変わらず一定で 一切無駄が見られない。世の中にはこんな美しい人間がいたのか、この姿を撮影したい。監視カメラを設置して彼の姿をずっと見ていたい、、、俺はまた妄想に走ってしまっていた。 ハッとした時には絵のかたまりは増えていて、よく見たらその中に手、らしきものを発見した。俺は君の最初の記憶は何かと聞いて彼にあった事件を思うと、僅かに嫌な予感がした。 それは手かと質問しても良かったが、この絵の完成を見たかった。質問して、もし絵が途中で終わってしまっては勿体ない。嫌な予感が正しければ、とんでもない絵が描き上がるに違いないし何より彼をずっと見ていたかった。 絵が完成するまで、じっと御上拓人を見つめ続けた。
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