めでたし、めでたし

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めでたし、めでたし

 冬休み前に成田さんに頼んで、部室の隅の一角を貸し切りで、ホテルでの映像を見せてもらった。  叶先輩からは、見なくていい、嫌だと思ったらすぐに止めて言いと言われたけど、最後までちゃんと見たかった。  反省会の時に、考察として出された仮定の一つ。「考え、および感情を増幅させて、爆発させるもの」という仮定。これは、私が映像を全て見ないと検証できないものだった。  そもそも、自分が何を言ったかも分からないままにしておくのも気持ち悪い。だから、口走っていることを一つ一つ確認した。  反省会の前に成田さんから貰った紙は、やっぱり、話ていたことを一部カットしてあった。  全部を見せるのは酷だろうという判断があったのかもしれない。  全て見終わった時、机の反対側に美羽がいた。凛とした姿勢で、言いたい事は全部言ってみろと言われているみたいだ。 「たぶん、言ってたことは全部、事実。でも、ここまで強烈な感情ではないと思う」  そう、と美羽が答える。 「ずるいとは思う。努力とか頑張りとかそういったことは全部無視して、なんで美羽は才能があることが沢山あるんだろうと思う。でも、美羽が嫌いだとか、疎ましいとかは思ったことない。自分の出来なささを突き付けられて嫌になることはあるけど」  きっと、この時に美羽のことを傷つけたと思う。醜悪な部分を曝け出してしまったと思う。  でもちゃんと伝えたいことがある。 「美羽が努力した結果だけは変わらないから、私は美羽の頑張ったことを否定しない」  自分の入ったことを知らないままで、美羽に無理させたくなかった。だから、ずるいって思っても比較されることに疲れても、絶対忘れなかった、忘れないようにしていたことだけ伝えたかった。 「そっか、そっかぁ」  伝えたら、もしかしたら怒られるかなとか呆れられたり、見限られたりするのかなと思ったのに、聞こえたのは、心底安心したような言葉だった。 「ありがとう、私の努力を認めてくれて。ごめんね、辛かったことに気付いて上げられなくて」  その優しい声に泣き出してしまったのは、私が不甲斐ないだけじゃない。その声が優し過ぎるのは悪いんだ。  日常の延長線上の非日常は私に優しかった。
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