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傘職人連合の陰謀
「いけ好かねえな」
同じ雨を見ながら、羽左衛門は吐き捨てるように言った。その背中に、妻が溜め息をつく。
「あの町人の傘が出だしてから、うちのはちぃっとも売れないじゃないですか」
「あのヤロウ。傘買いの分際が成り上がりやがって」
羽左衛門は窓から離れ、土間に腰かけた。
「何か良い手が無えもんかな……」
腕を組んで思案する彼。一瞬、ピカッと光りが閃き、全てが真っ白になった。
ドガーン!
遠くの方で落雷の音がする。
その後、急に雨が激しくなった。
手前の往来から、慌ただしくなった人の気配が伝わってくる。
「クククッ……クックック」
突然、羽左衛門は肩を震わせて笑い出した。
「良いこと考えついちまったぜ」
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