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 その女性は白いロングスカートを身に着け、片手には可愛らしいバッグを持っていた。色白で整った顔をしており、それでいて化粧っ気がなく爽やかな印象を受ける。  伸太郎が「ああ、美穂さん、どうぞ」と言うと、彼女は少し頭を下げ、テーブル席の方へ向かった。  伸太郎はしばらく彼女を眺めていたが、ふと気がついて宗吉の方を見た。しかしその時には、彼の顔は満面の笑みに覆われていた。本当にこの人は勘が鋭いと思う。 「お待たせしました、いつものコーヒーです」  伸太郎は平静を装って宗吉にコーヒーを出した。宗吉は黙ってそれを一口飲むと、笑顔のまま言った。 「うん。まあ、別に悪くないんじゃないか?」  コーヒーの話だということにして、伸太郎は一言ありがとうございます、と言った。  話題を変えようとしたところで、美穂さんの「注文いいですか?」という声が聞こえた。伸太郎は返事をすると、宗吉の視線には応えずにカウンター内から出た。 「特製オムライスと、ミックスジュース下さい」  美穂さんはメニュー名を指さして言う。伸太郎は息が詰まりそうになるのをこらえながら口を開いた。 「また来てくださったんですね。ありがとうございます」 「ここのお店、気に入っちゃって」 美穂さんは微笑して伸太郎の目を見た。こうなると伸太郎も何かしてあげたくなる。 「あの、もし良ければ、食後のコーヒーをサービスしましょうか?」 「え、良いんですか?」 美穂さんが目を見開いて言う。今までに見たことのない表情に、伸太郎の胸が高鳴る。 「常連さんとか、特別なお客さんには何かサービスしているんですよ」 伸太郎は強張った顔を懸命に動かして笑顔を作ったが、その代わりに思わず目を反らしてしまった。  美穂さんの感謝の言葉を受け取ると、伸太郎はカウンターに戻った。何食わぬ顔でミックスジュースをつくろうとすると、宗吉が嫌味っぽく言った。 「それで、一番特別なお客さんへのサービスは何かな?」  
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