反転

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反転

 異変に気付いたのは数日後だった。  食べたはずの飯が冷蔵庫に復活している。  漫画の冊数が減っていく。  そして、外には誰もいない。  「……おかしい」  思わず独り言も漏らしたくなる。  卓上のカレンダーを見れば、今は平日のはずだ。  なのに外には誰もいない。車はおろか、人も、犬も、猫も、鳥も、何一つ。  まるでゴーストタウンじゃないか。  ふと見ると、時計の針は三時を回ったところだった。  その分針はほんの僅かに右に傾いている。  三時一分、と俺は読んだ。  分針の隣を通り過ぎる秒針が忙しなく左に回っていく。  そこで気付いてしまった。  「時計、逆周りしてないか……?」  持ち上がった秒針が真上を通り過ぎ、一分を指していた分針も真っ直ぐ上を向く。  時計は、三時丁度を指した。
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