起床

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起床

 不思議体験とでも言うのか。  夢は見ない方だが、珍しく夢を見たような気がする。  微睡みの波が引き、自然と瞼が開く。  目を開けてすぐに飛び込んでくるのは、見慣れた青いカーテン。しかし今は眼鏡をかけていない上、暗くて全体はよく見えない。  ひとまずベッド脇に置いてある眼鏡をかけ、視界を確保してから辺りを見渡す。  カーテンの隙間から差し込む薄明かりが、見慣れた自室の輪郭を映し出していた。  ……今、何時だろう。  俺はこの部屋にある唯一の時計に目を向ける。学校やオフィスにある、飾り気のない丸いアナログ時計だ。  時計は、三時を指していた。ということは、今は夜中か。  「……夜!?」  すっきりお目覚めでのほほんとしていた頭から一気に血の気が引いていく。  ヤバい。圧倒的に語彙力が足りないのはとにかく、ヤバいという言葉で頭が一瞬にして埋め尽くされる。  丸一日寝ていた? ということは、がっつり無断欠勤扱いじゃないか。確か今日は……。  今日は、土曜日。休日だった。  なんだ、安心した。  俺は気の抜けた溜息をつきながらベッドから降り、背中を伸ばす。  しかし夜か。生活リズム、めちゃくちゃ崩れてしまったな。  そんな事を思いつつ、朝食、もとい夜食を求めて一人暮らし用の小さな冷蔵庫を開けた。
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