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 車のスピードを抑え、周りの景色を確認する。確か事故現場の周辺は他と比べて急斜面だったはずだ。バランスが悪いだろうに、しっかりと根を張っている木々が印象的だった。そして、太陽の光があまり入らない場所。捜査に苦労したと若い警察官が言っていた。  わたしが今いる場所は昼間にもかかわらず暗い。事故現場はこの辺りだろうか。通行の邪魔にならなそうなところに車を停めて外に出る。  何かが出そうな雰囲気だ。そういえば、誰かが話していた。事故現場が心霊スポットになっていると。  噂は二つある。一つはこの辺りを車で通るといつの間にか女性が乗っている。そしてもう一つは、頭から血を流した男性が徘徊している――両方とも夜になると現れるらしい。   その噂は夫が起こした事故の前にはなかった。だから男性の徘徊はきっと私の夫だろう。女性の方は助手席に乗せていた人、だと思う。  現れる条件はカップルが乗った車が通った時だ。それ以外の人は見たことがないと聞いた。仲睦まじいカップルが通ると必ず現れて事故が起きる。確か死亡事故もあった。特に女性の霊がよく出没する。  突然空いてる席に見知らぬ女性が現れたら怖い。よほど肝が座った人じゃないと事故を起こすのも当然。想像しただけでも恐怖で体がこわばるが、あいにく今はわたし一人だけだ。出現する条件を満たしていない。落ち着け、大丈夫だ。
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