成り代わり願望

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 ケースの中に入っているカードを勢いよく引っ張り出す。いくつかのカードが太ももに落ちた時、決定的な証拠を見つけてしまった。  知らない女性の肩を抱き寄せ、笑顔でピースしている男の写真を。そして、女性が大事そうに抱いている生まれて間もない赤ん坊――どう見ても、幸せな家族写真だ。  そっと手に取り、男の妻を見つめる。肩までかかった髪は艶があって同性から見ても美しい。だが、腰まで伸びた自分の髪の方がもっと美しい。化粧をしていないその顔は平凡。育児に疲れているのかもしれない、少しだけ肌が荒れている。そんなどこにでもいる普通の女だ。  私はバッチリ化粧をしている。可愛く、美しく見える角度も研究した。髪と肌の手入れを怠った日はない。結果、たくさんの男達が私に声をかけてきた。  男に不自由したことはない。別れる時は私の方から振ってやった。今までも、そしてこれからもそうなるはずだった。私が相手から振られるなんてありえない。  今回の交際は私もいい年だし、結婚を前提にお付き合いしようと思っていた。見た目は好み、性格も合格。何がなんでも結婚したいと思っていたのに……こんなの、裏切りにあうなんて。
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