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誰よ、この優良物件を奪ったのは。
そう、この写真の女だ。
荒れた肌、醜い形の爪、小さい目――どの部分を見ても私よりずっと劣っているじゃない。
許せない――胸がズキズキと痛む。ドス黒い感情が渦巻き、嬉しそうに微笑んでいる妻の顔に爪を立てる。どこかに引っ掛けたらすぐに割れそうな長い爪は、顔に深々と入り込む。ああ、隣りにいるのが私だったら……。
「君とはお別れだ」
男の声が聞こえる。もう、愛を囁いてくれない男の声。
これ以上、愛のない言葉は聞きたくない。
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