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夫は昔、プレイボーイとして名を馳せていた。彼女がいない日なんてない。お付き合いは長続きしないことが多かったが、フリーになった瞬間、学校中の女の子がこぞって告白していた。
わたしはそんな様子を遠くから見ていただけの存在。まったく興味がなかったわけじゃないが、女子たちを敵に回すのだけは避けたかった。女の嫉妬は怖いから。
彼とは関わることなく卒業するだろうと思っていた。しかし、大学生活に馴染んてきた頃、廊下の曲がり角で彼と正面衝突をしてしまった。大量の本を抱えていたので前がよく見えていなかったのだ。ベタな展開ではあるが、これが夫との出会い。
夫いわく一目惚れだったそうな。その日以来、彼はその時お付き合いしていた彼女を振って、わたしにちょっかいを出してきた。
当然わたしは嫉妬の対象になったが、彼は早々に手を打った。なんと、出会って三日だというのに告白してきたのだ。いくら何でも早すぎる。大して親しくないのに。
『僕と付き合ってるってことにしちゃえば大丈夫だよ』
最初は何を言っているか解らなかったが、すぐに彼に思いを寄せている人たちの間で【付き合っている女には手を出さない】という決まりがあることを知った。手を出せば嫌われる。大学生だからだろう、みんなどうしたら嫌われるかは十分承知していた。
それに、付き合ってもどうせ長続きしない。結果的に、結婚するまでお付き合いすることになったが、当時は長くても半年ぐらいで別れると思われていた。
大学生活中は常に彼が側にいた。正直、トイレにまでついてこられるのは勘弁してほしかったが、おかげでわたしの大学生活は平和に終わったと言っていい。今では感謝しているぐらいだ。
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