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事故があった当日、車の助手席に女性が乗っていたと判明した。そして、警察の方から告げられた女性の名字には見覚えがあった。わたしが入院している間、夫は毎日どこの誰の家に泊まるというメールを送っていたのだが、その中にまったく同じ名字の家があったのだ。泊まっていた頻度も高い。このメールは退院後に消そうと思っていたが、忙しくてすっかり忘れていた。かなり珍しい名字だから間違いないだろう。
本人の口からはもう真実を聞けないが、これは、きっと浮気をしていたに違いない。最初は怒りが勝った。浮気をして、事故を起こすなんて自業自得だ。事故の発生から数日は荒れ狂い、胃がムカムカして、ぶつけられない怒りを心の内に溜めに溜めて……いつしかすっかりなくなっていた。
悲しみがやってきたのだ。どうしてわたしは夫と一緒に死ねなかったのか。
――これは嫉妬だ。助手席に乗っていたのがわたしだったら……。たったそれだけ。それだけで顔を合わせたこともない女の人を恨んでしまう。最後に夫と過ごしたのが見知らぬ女性だなんて、今すぐ変わってほしい!
ああ、わたしはいつ嫉妬深くなってしまったのか。あの人の笑顔が見たい。わたしだけを見つめて、幸せそうに微笑んでいる顔が見たい。未だに見つかっていない写真には、夫のそんな笑顔が写っていた。そうだ、探さないといけない。わたしたちの大切な思い出を。
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