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4︰呆気ない幕引き
今日も今日とてやって来ました「午後3時の休憩所」
いや、今日までの間にもちょくちょく来てたんだけどね。
少しずつだけど歩くんの腕も再生してきていて、うん。
凄いね、本当に生えるんだなって実感しました。
その前にですね、たった今俺の目の前で、物凄い大捕物が起きたんですよ⋯
何故って?
俺を目印にこの店を見つけやがったんですよ例のエセ研究者野郎!
どうも先日の歩くんの怪我の原因となった喧嘩の相手方のアニマノイドがお店を見張っていて、この犯人と繋がっていたらしく俺がお店に入り浸っているのがわかっちゃったらしいんですよね!!
そしてそれに気付いていた虎徹さん達が、逆に俺を囮に使ったと⋯
一応一言言っておいて欲しかったなぁ⋯
いや、まぁお役に立てたなら良いです。
捕まえたエセ研究者をどうするのかと聞いたら、虎徹さんから「日本じゃ毎年約8万人以上も行方不明者が出てるんだ、1人くらい増えたってわからないだろう?」と良い笑顔が返ってきたのであまり詮索しない方が良さそう⋯
君子危うきに近寄らず、って奴だね。うん。
そんなこんなでようやくお店に入れたんですが⋯
「あーくん無事で良かったぁあああ!!」
「た、助けてくれぇ⋯」
歩くんが謎の美女に抱きしめられて苦しそうにしてるんだけど、どういう状況なの⋯?
カウンター奥でグラスを磨きながら、「仕方ないなぁ」とばかりに苦笑いを浮かべていた理さんに視線を向けると、そっと目の前の席を勧められた。
え、助けなくていいの?
歩くんが物凄く「裏切られた!」って顔してるけど良いの??
「すいません、騒がしくて⋯」
いや、それはいいんだけど⋯
どうしたの、あれ⋯そしてどなた⋯?
「あぁ、あの人はベンガルワシミミズクの優陽さんです。結構な常連なんですけど、歩がお気に入りで⋯」
エセ研究者の件で心配してあの状態って事か⋯
わからないでもないなぁ⋯
茶髪のロングヘアの天辺にミミズクの特徴的な羽がぴょこりと生えているのがなんだか可愛らしい美人さん。
⋯潰されてるわりには嬉しそうに見えるんだよね、歩くん⋯
「歩、女の人大好きですから」
なるほど。ある意味本望か。
⋯ん?もしかして成体になりたいってのも?
「そうですね、どうしても今のままだと子供扱いですから⋯」
それになんだかんだ言って歩、優陽さんに惚れてるんですよねぇ⋯という理さんの顔がニヤニヤしてる。
これは後でめちゃくちゃからかわれるぞ!
でもそうかぁ⋯好きな人にちゃんと男として見て欲しくて、って事だったのか。
⋯どっちにしてもこう、年上の女性に恋して一生懸命背伸びしてる感じがして微笑ましいのが抜けないのが歩くんマジックな気もする。
うん、応援したくなるよねぇ〜。
と言ってもこういう事は自分の力で頑張るべきなので、俺はわしゃわしゃされている歩くんを横目にコーヒーを啜るのだった。
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