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おおよそ3時。
その時間に駅に着く。
もう5分早ければ、前の電車に乗れるのだけど、バスが間に合ってくれたことはない。
ホームの端の方に置かれたベンチに戻り、ぼんやりと何もせずに20分。
でも、何気にこの時間を私は気に入っている。
自分がリセットされていくようなそんな気がしていた。
私はベンチの左端が定位置だけど、右端を定位置にしている男子高校生がいることに最近気がついた。
他校の制服を着ていて、ブックカバーをつけた文庫本をいつも読み耽っている。
待っている電車が来ると、私は2号車に乗り、男子高校生は本に目を落としたまま、最後尾の1号車に乗り込んでいく。
ここのところ毎日そうだった。
ま、気にすることじゃないか。
私はまたぼんやりと反対側のホームを眺める。
電車を待っている人は、座っている人も立っている人も、若者もお年寄りもみーんなスマホをいじっている。
こちらのホームも同じ。
みーんなスマホをいじっている。
こうして見ると、異様な光景。
……ま、いいんだけどね。
電車が来ますのアナウンスに、電車が来るであろう方向に顔を向けると、文庫本をパタンと閉じた男子高校生と目が合った。
「あ。」
思わず声を上げた私に、
「ん?」
と相手が応じる。
お互い固まっているうちに電車が到着。
ドアが開くと同時に、いつもの車両に分かれた。
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