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「うわあああん!!!お姉ちゃんのばかああ!!!」
「ごめん、本当にごめんっ!」
「お気に入りの傘だったのにいいい!!!」
「ごめん、新しいの買ってあげるから!ねっ?」
「いやだああ!!!これがいいの!!!」
ぎゃんぎゃん泣く弟に必死になって謝り倒す私。嗚呼、これいつだったっけ…?
「お姉ちゃんなんか嫌いいい!!!」
「ごめんってぇ……」
そうだ、あの子が小学生の時だ。間違えてお気に入りの傘壊しちゃったんだよね…そういえばまだ許してもらってないなあ
「姉さん!姉さん聞こえる!?姉さんっ!!」
呼ばれてふっ、と目を開く。目の前一杯に弟が見えた
「っ!姉さん!!」
もう声変わりも終わって、男の声になった弟。大きくなって、ぎゃんぎゃん泣くことはきっともう無いんだろう。涙を堪えた顔をぼんやりと見つめながら、どこか冷静に考える
「よ、よかった!!大丈夫!?すぐ救急車くるから!!」
救急車…?ああ、私階段から…
「ごめん、また傘壊しちゃった?」
「そんな事…っ!!」
堪えきれなかったのかボロッと涙を零した弟が、慌てて目を擦る
「そんな事っ!今気にしないでよ!傘より姉さんの方が大事だ!」
叫ぶ姿は少しまだ幼いけれど、顔はもう大人のそれだった
「なにさ、人の顔じっと見て」
「……傘、新しいの二本買ったげる。昔の分と今回の分」
「は?こんな状況でどうしたの?」
「弟の成長を祝して、ね?」
「意味わかんないんだけど…」
ポカンとしている弟にクスッと笑う。後ろから救急車の音が聞こえた
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