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灰色のポットでお湯を沸かしながら、
今日はどのお茶っ葉を使おうかと迷っていると、オートマター機械人形ーの少年が、手を止めてこちらを伺うように見上げた。
彼は、両親が、自分が幼い頃に兄弟代わりにと買ってくれ、物心つく頃には、共にあったので、本当の兄弟の様に育ったのだ。
しかし、自分の背が伸びていくのに、彼は最初に見た姿から、姿が変わらず、幼い自分は兄だと思っていたら、いつの間にか、背が並び、周囲からは、今は自分の弟の様に思われている。
まるで、時の流れから、取り残されてしまったかのように、彼だけが、いつも変わらぬ姿で自分の傍らに居続けていた。
美しい二重の淡い琥珀色の瞳を縁取る、長い睫毛が、陶器のような頬に影を落とす。
ミルクティーの様な柔らかそうな猫っ毛の髪の毛を見つめて、彼の反応は、全てプログラミングされている、無機質なモノなのかと、ため息をつく。
両親は、事故で亡くなるのを予見して、彼を自分にあたえてくれたのだろうか。
しかし、はたして自分のこの感じている思いも、本当なのか、神様が自分という機械人形にプログラミングしただけの思いなのではないかと、疑問に思う。
「今日は、キャラメルティーにしようか?」
私の問いかけに、彼は嬉しそうに目を細める。人間と同じように食事をとり、そこからエネルギーを得る彼は、天使のような微笑みを浮かべ、こっくりとうなずいた。
外の世界は、私を傷つけるモノばかりで、彼さえ、そばに居てくれるなら、それ以外は望まない。
上辺だけの笑顔を浮かべ、心の中では、人を羨んだり、さげずんだり、表面と内側の違う人間ばかりで、私の心は疲弊してばかりだった。
そんな私に残された、たった1つの宝物。
彼の笑顔を守るためになら、私は外の世界では、心を鎧で装備して、戦うことも厭わない。
この大切なティータイムの時間だけは、誰にも犯されないように守り抜くと、堅く自分に誓ったのだ。
自分と彼のために作った、我ながら絶品だと思う焼き菓子を準備しながら、お気に入りのカップを用意する。
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