第一章 つれづれなるままに

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第一章 つれづれなるままに

 就職先としてこの業界に飛び込んだことにはちょっとだけ理由がある。その1、結婚相手を探せるかもしれないこと。その2、そこそこお金を貯めることが出来るかもしれないこと。その3、いわゆる「ノリ」というやつ。  人間関係にほとほと疲れて前の職場を辞めた私は、転職者向けのフェアに出かけた。自分で言うのもなんだが、めんどくさがりだったのでてっとり早く就職先を見つけたかったのだ。それにハロワで一対一で相談するのは苦手だったから。  転職フェアでご縁のあった人と面接日をすぐ決め、そしてあっさりと転職することが出来た私。その頃の同期はほぼ4人。サクサク事が進み、小柄でニコニコ顔のオオカワちゃんは役員秘書。それ以外は部長付きOLとなった。  私の他にはクシャミで呼ばれて出てくる某マンガのキャラの妹に風貌がそっくりだった、あくびちゃんは設計。ちょっとアレルギー持ちで原色大好きな小物使いの私より1コ上のユリエさんは工務。そして私は積算部に配置となった。  仕事を始めて数ヶ月経った頃、ようやくこの会社がくせ者揃いだということに気付いた。他の職種や会社ではどうか判らないが、このガテン系の世界は、 見た目の可愛さ、がまず「勝ち組」の第一歩となる。ただし、私のごくごく個人的な分析であるが、「可愛さ」だけではアッという間にちやほやされなくなってしまう。そう、「性格の良さ」と「仕事が出来るか否か」でその後の身の振り方がかなり変った。 「アンタかい?最近橋本さん(積算部長)の下に入った子は?」  オジさんにいちいち自己紹介を求めてはいけない。だって面倒くさがりなんだもの。なのに、人のことはやたら知りたがる。それがオジさん。
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