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ひとまずメニューを開いてオーダーを済ませたところで高良が訊いた。
「二人は学生さん?」
「はい、あ、ハタチは超えてますよ」
三人ともアルコールを頼んだから、彩がそう言った。
アイドル並みにかわいい顔をした彩は、人形みたいな雰囲気のせいか、まだ十代に見られることがある。
「いや、大丈夫だよ。申告ありがとう」
「どういたしまして。前園彩(まえぞのあや)です」
「奥宮匠(おくみやしょう)です」
彩に続いて匠も名前だけ名乗った。
「高良義経(たからよしつね)です」
「かっこいいですね、義経って」
「そう? 古臭くない? 時代劇みたいで」
「全然。高良さんの雰囲気に合ってるよな」
「うん。硬派な感じします」
ハイボール二つとマンゴーサワーが届いて「映画お疲れさまでした」というよくわからない乾杯をした。
「いや、ホントに長い映画だったね。二人はあの店によく来るの?」
「匠と一緒に来るのはそんなにないかなー」
「彩は恋人と来ることがほとんどで、おれは一人で行くことが多いですね」
ちょうどいい、フリーだと教えておこうと匠はさらっと言った。
「あれ? 二人は恋人じゃないんだ?」
「違いますよ、匠はただの友達。恋人はべつにいます」
「そうなんだ。仲良さそうだからてっきりそうかと」
ソファ席に二人で横並びに座っていたからそう思ったんだろう。でも彩の恋人は凜花という気の強い女だ。
「仲はいいですよ。匠は安心できる男の子なんで」
おれはちょっと苦笑する。
彩の発言の意味を高良は正確には理解できないはずだ。彩にとって安心できても高良にとってはどうだか。
高良はもちろんそんなことは知らないで、そうなんだと聞いている。
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