第1章 シネマカフェ「カノン」

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 ひとまずメニューを開いてオーダーを済ませたところで高良が訊いた。 「二人は学生さん?」  「はい、あ、ハタチは超えてますよ」  三人ともアルコールを頼んだから、彩がそう言った。  アイドル並みにかわいい顔をした彩は、人形みたいな雰囲気のせいか、まだ十代に見られることがある。 「いや、大丈夫だよ。申告ありがとう」 「どういたしまして。前園彩(まえぞのあや)です」 「奥宮匠(おくみやしょう)です」  彩に続いて匠も名前だけ名乗った。 「高良義経(たからよしつね)です」 「かっこいいですね、義経って」 「そう? 古臭くない? 時代劇みたいで」 「全然。高良さんの雰囲気に合ってるよな」 「うん。硬派な感じします」  ハイボール二つとマンゴーサワーが届いて「映画お疲れさまでした」というよくわからない乾杯をした。 「いや、ホントに長い映画だったね。二人はあの店によく来るの?」 「匠と一緒に来るのはそんなにないかなー」 「彩は恋人と来ることがほとんどで、おれは一人で行くことが多いですね」  ちょうどいい、フリーだと教えておこうと匠はさらっと言った。 「あれ? 二人は恋人じゃないんだ?」 「違いますよ、匠はただの友達。恋人はべつにいます」 「そうなんだ。仲良さそうだからてっきりそうかと」  ソファ席に二人で横並びに座っていたからそう思ったんだろう。でも彩の恋人は凜花という気の強い女だ。 「仲はいいですよ。匠は安心できる男の子なんで」  おれはちょっと苦笑する。  彩の発言の意味を高良は正確には理解できないはずだ。彩にとって安心できても高良にとってはどうだか。  高良はもちろんそんなことは知らないで、そうなんだと聞いている。
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