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「そういう友達は大事だね。ところでその髪は染めてるの? とてもきれいなピンク色だけどウィッグ?」
彩の髪をまじまじと見ていた。
「地毛ですよ。このピンクを出すためには一度色を抜くの。それから色を入れるとこういう明るいピンクになるんです」
「へえ、手間がかかるんだな」
「美容師の友達が練習させてっていうから、タダでしてもらったの」
「似合ってるよ。ピンクの髪にしていいよって言ってくれる友達は貴重だろうね」
「高良さんもどうですか?」
高良の髪は黒くて短い。襟足がすっきりしていて、清潔そうなうなじがいい。口づけたらどんな顔をするだろう?
「さすがにピンクは困るよ」
「茶色でも栗色でも、会社で困らない程度に」
彩の提案に楽しげに笑う。
そう言えば、高良は彩の外見に怯まなかったなと思う。カラフルなミニワンピは彩の目鼻立ちのはっきりした顔に似合っている。
あの場の流れで誘ったけど、大人はたいてい彩の派手な色合いの服や髪にびびって、こんなにすんなり会話になることは少ない。匠のピアスやメッシュの入った髪に眉をひそめられることも多い。
デザイン系の学校に行っているとそんなに目立たないが、スーツを着て仕事をしているちゃんとした大人から見て、おれ達はどんなふうに見えてるんだろう。
「学校は美容系とかファッション系?」
「うん。このすぐ近くのデザイン系の専門学校」
ああ、あそこかと高良がうなずく。わりと大きな専門学校なので周辺に校舎が点在しているのだ。
「彩は建築デザイン専攻でおれはビジュアルデザイン専攻」
「じゃあ将来はインテリアデザイナーとかグラフィック関係?」
「そうですね。インテリアもいいけど、建築士になりたくて」
彩がふわりとした口調で言った。
「高卒で一度、就職したけど会社が不動産販売でめちゃくちゃ男性優位の会社だったんですよ。資格もないし、事務の女の子は黙って雑用やってろみたいな、すごい昭和な感じの。それが嫌だったのと、建築に興味持ったから、学費ためて進学したんです」
こう見えて、彩は匠よりもふたつ年上だ。
「しっかりしてるんだね。専門学校だと期間が短いから、きちんと勉強してる子はすごいよね」
丸い盆からはみ出した大きなナンが乗った銀色のプレートが届いて、ナンをちぎってはカレーにつけて食べながら会話は続いた。
話しているうちに高良の飾らない雰囲気につられて、ほとんど敬語は消えていた。
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