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「それより、匠くんこそモテるでしょ。そんなきれいな顔だし」
「そこそこね。でも好きな人からはなかなか好きになってもらえなくて」
モテないわけじゃないから否定はしないけど、おれは待つ恋愛はできない。いつも追いかける恋をしてしまう。追いかけて捕まえて食っちゃいたい。だって男ってそういう生き物でしょ?
「そうなんだ? 理想が高いとか?」
「匠はえり好みが激しいの」
彩が意味深な目つきで笑う。本当は性別の好みと言いたいんだろうけど、さすがにそこは言わないでいる。
「へえ。どういう感じがタイプ?」
「んー、放っておけない感じの人が好きかも。顔はクール系が好き」
「意外だな。かわいい系が好きかと思った」
「かわいい系よりギャップがある人がいい。クールな顔してるのに頼りない感じとか見せられたらハマっちゃうっていうか」
「なるほど。男の子って感じだね、追っかけたいタイプ?」
あー、そうですか。この言い方は通じなかった?
ま、高良さんノンケっぽいし無理もないか。
彩が隣りですました顔でマンゴーサワーを飲みながら足を蹴ってくる。
やめろっつーの。
「匠はこう見えて結構肉食系なんですよ。ちょっと優柔不断で迷ってる感じだったら、さくっと口説いちゃうの。高良さんも気をつけてね」
余計なこと言うんじゃねーよ。
テーブルの下で彩の足を蹴り返す。
「ああ、お腹いっぱい。おいしいけど、ナンて後からふくらんでくるよね」
四分の一ほどナンを残した彩が満足げにため息をついたとき、ぽろろんと音がした。テーブルに伏せていたスマホを確かめて「もー遅い」と文句を言いつつ返信を打っている。
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