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  「あ、また目が開いた」 ――なんか、聞いた声 ――あれ? ぼくは逝けたのか? これは新たな試練なのか? ――喉が痛い 「おい、もう眠るな。お前がしっかり起きればその変なもん取ってくれるってさ。苦しいんだろ?」 ――嫌なことに、ゾッとすることに、僕は頷いていた ――なんで? どうしてこうなった? 「待ってろ、今ナースコール押したから」 「喋ってる……起きたんですか?」 「ああ。そのコーヒーくれ」 「ずい分な物言いですね」 「うるせえ、騙しやがって。刑事だって思ったんだ、まさかこいつの従弟だなんて」 「別に嘘をついてないし。誰だ? って聞かない方が悪いし。警察手帳も出してないし」 ――僕は手を上げた そばにある手を掴む うるさくて敵わない 「なんだ? なんか言いたいのか? 何やってんだよ、ナースは!」 『どうしました?』 「どうしたじゃねぇよ! 起きたんだ、すぐ来てくれ」 『お待ちください』 「なんて事務的なんだ、人の命を預かってんのに」 「あなたって暑苦しい人ですね。圭はそういうの嫌いですよ」 「好きも嫌いもあるか、命の恩人だぞ」 ――あんたが助けたの? そりゃいい迷惑だよ  逝けないとなれば仕方ない。ちゃんと起きてこの無駄に苦しい物を取ってもらおう。 「どれ、しっかりと目が覚めたようだね。良かった。これから人工呼吸器を外すけどちょっと苦しいからね。しばらくは喋らないように」 ――戻るのも楽じゃない。もっと違う日にすれば良かった。大安吉日なんて当てにならないもんだ。引っ越しの挨拶を先に終わらせれば良かったのか。やっぱり他人を蔑ろにしちゃいけないんだな…… ――戻った早々また反省。まったくもって嫌になる。   
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