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    圭の父は裕福らしい。その奥さんも当然裕福だ。ある日、祖母ちゃんの家で夕食を食べていた時にチャイムが鳴った。玄関に立った祖母ちゃんが誰かと押し問答をしているのが聞こえた。 「圭、奥に入ってな!」  チラッと見えたのはなんだか偉そうなおばさんだった。 「その子がそうなの? いいわ、このまま引き取るから。あなた、こっちに来なさい」 「そんな権利は無いだろう!」  祖母ちゃんの声が響く。 「父親が引き取るって言ってるの。文句は無いでしょう。大学にも行かせるし生活にも不自由させません。こう言っちゃなんですけど、この家よりはねぇ」  小学校2年だった。その口調で祖母ちゃんが見下されているのが分かった。普段はすごく大人しい子だったが我慢が出来なかった。 「出てけ! 祖母ちゃんに変なこと言うな!」 「圭、引っ込んでな!」  それからまた元の生活に戻った。けど中学1年の時、校門から出たところで腕を掴まれた。知らない50代くらいのの男性。メガネをかけて少し痩せている。スーツを着てそして表情が無かった。 「お父さまがお待ちです。車にお乗りください」  口調は丁寧だが威圧的で圭は大人しく車に乗ってしまった。それきり祖母ちゃんとは会えなかった。  豪邸に連れて行かれた。2階の部屋に案内される。 「欲しいものがございましたらそこの受話器を取ってください。すぐに誰かが出ます。着替えはクローゼット、トイレとシャワーはそこのドアを開ければあります。大きな浴室が良ければ下にありますが、電話をかけて頼んでください。部屋はご自由にどうぞ。転校手続きはもう少しすれば終わりまので2日ほどお待ちください。お父さまは来週デンマークからお帰りになります。では」   
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