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  「圭、圭、起きろ! 圭!」 「あ、やだ、かえる……」 「圭!!」 「……惣ちゃん?」 「ああ、洗濯しに来てみたらお前、うなされてたから。なんでソファなんかで寝てるんだ?」 「何時?」 「夜中の12時半。今日は早く終わったんだ、今の現場が今日までだったから。立て、ほら」  力強い手に引き起こされた。 「サンドイッチの後なにも食ってないんだろ」 「うん」 「しょうがないなぁ。帰りにさ、お握り買ってきた。1つ食うか?」 「惣ちゃんの分」 「イヤな予感がしたから1つ余分に買った。だから食っていいよ」  手渡されたお握りは冷たいのにあの時のスープより温かい。黙々と食べた。 「しまった、コーヒーの粉無かったんだっけ」 「食器棚の下の奥に入ってない?」 「ちょっと待て」  見つけたコーヒーの瓶を手に取って確かめている。 「来年の3月まで飲めるな。封、開けるぞ」  コーヒーの香りがたちこめる。 「あ、お握り渡したんだった。お茶が良かったよな」 「いい、コーヒーで」 「そうか? じゃ」  受け取ったコーヒーを両手で包むように持った。 「寒いのか? 部屋は充分あったかいけどなぁ」  パンをむしゃむしゃと食べながらいつもと変わらない様子の惣介。なんの夢を見たのかも聞かない。   
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