2.お屋敷で

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2.お屋敷で

 スラム街を後にした二人は、待たせてあった馬車に乗り込み、帝都で選帝侯が宿泊するための屋敷へと向かった。ルルはぼんやりと外を流れる景色を眺めていたが、やがて疲れて眠ってしまった。 「ルル、起きて、着いたよ」  テオに揺り起こされてルルはきょとんとした顔をしている。 「誰……?どこ……?」  ねぼけた様子でキョロキョロと辺りを見回し、大きく伸びをすると、ようやく今夜の出来事を思い出した。 「目が覚めたかい?さ、今日はここで泊まって明日の朝にはヴァルテン領に向けて出発だ」  ルルの目の前に現れたのは、大層立派なお屋敷であった。むろん今まで暮らしてきた家に比べればたいていの家が立派である。 「ふわぁ、おっきい」  屋敷を見上げて感嘆の声を上げる。 「さ、軽く食事を摂ったら今日は眠るとしよう」  食堂に案内されると、ルルは薄焼きパンに新鮮な野菜と蒸し鶏をはさんだものをガツガツと食べ、トリードの実を絞った少し甘いジュースをゴクゴクと飲み干した。そして食べ終わるとすぐにまた睡魔に襲われたようでコックリコックリと船を漕ぎだす。その様子をテオは目を細めて見守っていた。 「寝室に案内するよ。明日は早くに出発するし。さ、猫ちゃんたちも一緒にどうぞ」  猫たちはニャーンと声をあげると得意げにしっぽをピンと立ててついてくる。ファングも案内係よろしく猫たちの前に立って歩きだした。部屋は選帝侯のお付きの人が泊まるための部屋だったがスラムで過ごしていたルルにとってはえらく豪奢な部屋に思えた。  しばらく物珍しそうに部屋を眺めていたが、清潔なシーツの敷かれたベッドに潜り込むとすぐにすやすやと寝息をたてた。猫たちもルルの足元で気持ちよさそうに丸まって眠った。  そして翌朝、まだ暗いうちに部屋のドアがノックされた。ぐっすりと眠りこんでいたルルは気付くことなく眠り続けている。 「ルル、ルル、起きなさいよ、誰か来たみたいよ」  クロに肉球で頬をぺしぺしされてようやく目を覚ますと、眠い目をこすりながらふらふらと扉に向かう。扉を開けるとすっかり旅支度を整えたテオが立っていた。 「おはよう、ルル。よく眠れたかい?」 「うん」 「じゃあ出発だ。朝食は道中摂ることにしよう」
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