4.隣国からの使者

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4.隣国からの使者

 ヴァルテン家のお屋敷で暮らすようになったルルは、アウィスやマーサにいろいろなことを教えてもらい日々を過ごしていた。文字の勉強も少しずつ進み、ようやく自分の名前が書けるようになった。 「これ、私の名前?このグニャグニャの記号が私なの?ちゃんと書けてる?」  ルルは心配そうに尋ねた。 「えぇ、ちゃんと書けているわ。これで“ルルティア”と読むの。“ルル”だとこうね」  アウィスは紙に綴った。 「ふーん。じゃあやっぱりルルでいいや。こっちの方が簡単!」  ルルは熱心に二つの記号のかたまりを見比べてそう言った。アウィスは微笑んで、そうねとうなずいた。  これ、ルルの本ね、と文字の教科書に“ルル”と記した。何だか嬉しくなってあちこちにに自分の名前を書こうとして……セーリオに怒られた。その様子をアウィスは大笑いしながら見ていた。  温室でのお仕事は最高だった。花の香に包まれていると何とも言えない幸福感が得られる。花々の名前もずいぶん覚えた。小鳥たちとも仲良くなり、肩や頭にたくさんの小鳥を乗せ歌いながら花々に水をあげるのが日課だ。時にはテオやアウィス、執事のセーリオと一緒に街に出かけて買い物をしたり、お祭りを楽しんだりした、街の人々と一緒に歌ったり踊ったりして、お腹が空いたら屋台で串焼きを食べる。ほっぺたが落ちるほどおいしかった。  平和で穏やかな日々が続いた。ずっとこんな毎日が続くのかな、ルルはいつしかそう思うようになっていった。  ルルがこのお屋敷にやって来たのは夏の暑い日であったが、季節はめぐりそろそろ冬将軍の足音が聞こえてくる時分となった。冬のヴァルテン領は雪に包まれる。そろそろ冬支度をしなくちゃ、そんな声が聞こえ始めたある日のこと。屋敷で書類に目を通していたテオのもとに帝都から早馬がやってきた。使者はテオと何やら長い間話をしている。次いでヴァルテン領の主だった貴族や役人、軍事を預かる人々が集められた。  何だかお屋敷がざわざわしていて落ち着かない。ルルはアウィスに何があったのか尋ねた。すると、どうも“緊急招集”とやらがかかったらしいとアウィスは教えてくれた。
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