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王子様の新記録
目を覚まして、隣に誰かが寝ている安心感と幸福感とを、聡は久しぶりに味わった。
一体、いつ以来だろう?と改めて考えてみたが、思い出せなかった。
白河とは一緒に寝たことは何度もあっても、眠ったことは一度もなかった。
――ということは、もう二年以上前になる。
眠り続ける和の顔を、聡は眺める。
昨日の午後十二時に十八才になったばかりに相応しい、あどけない寝顔だった。
ついさっきまで、その若さに任せるように自分を欲しがり求めてきた烈しさはどこにも見当たらなく、愛らしいとさえ、思った。
聡は和が寝ているのをいいことに、その頭を撫でた。
起きている時は、身長と体格との差が気になり、どうしても出来ないでいた。
また、「子供扱いするなよ!」と跳ね除けられるかも知れない、とも思った。
聡としてはごく弱く、そおっと撫でていたつもりだったが、和が身動ぎをした。
二度三度と瞬きをし、ようやく焦点が合った目で聡を映しつぶやく。
「センセイ――」
和は、聡の手を払い除けたりはしなかった。
それでも聡はそっと手を退け、横を向く。
「その、センセイっていうのは・・・いい加減止めないか?」
さっきも、いわゆる真っ最中に和にそう呼ばれて、聡は本気で嫌がった。
しかし、それどころじゃない和はすぐに、言い慣れているだろう「センセイ」へと戻った。
聡も注意をするどころではなかったので、結局は最後のさいごまで、そのままだった――。
思い返すだけでも、聡は逸らした顔が赤くなるのが分かった。
和が大きなあくびをしてから、屈託なく言い放つ。
「今はヤってないから、別にいいじゃん」
「・・・・・・」
黙っている聡の赤い顔を間近に覗き込み、和は言う。
「それにセンセイ、前に、退院しても患者だって言ってたよね?」
「・・・・・・」
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