630人が本棚に入れています
本棚に追加
ロッシュ・リード(13歳)は一人、眺めのいい丘に寝転び、山並みの向こうに広がるだろう遥か先の未知なる世界に思いを馳せていた。
そんなのどかな風が吹き渡るその場所へ、一人の少年がそっと近寄ってくる。
少年の名はリューリック・オマリ(11歳)。見た目はまるで美少女のように色白く、やわらかな金色の流れる髪と線の細さを持ち合わせていた。
一方、オマリとは真逆な容姿を持つリードの髪は神秘的な黒色。更には子供にしては大人びた鋭さを秘めた漆黒の瞳。
まさに対照的な2人が寄り添うように場に溶け込む。
オマリは傍らに寝転ぶリードの胸元に自分の頬を静かに沈めた。
リードは一瞬ピクッと身を震わせたが、そのまま動くことはなかった。
少しはだけた胸元に頬を乗せたまま、オマリは囁くように口を開く。
「リード…
大きくなったら、僕をリードのお嫁さんにしてよ…」
そのあまりの唐突さ、質問の意味に困惑したリードは苦笑するしかなかった。
「ハッ…なにバカなこと言ってんだよ」
男同士で嫁もクソもあるか、と内心毒づく。
しかし自分の胸に顔を埋めたオマリの表情は、どこか物悲しそうで、今にも泣き出しそうだった。それを目の当たりにしたリードは僅かに動揺する。
次の瞬間――
「…痛ッ…!」
左胸に鋭い痛みが走ったかと思うと、リードはオマリが自分の胸に歯を立てている衝撃的な光景を目にしたのだった。
さすがに驚き飛び起きると、オマリの華奢な身体を思い切り突き飛ばし声を荒げる。
「なんの真似だよっ!」
リードはオマリを強く睨みつけると、そのまま駆け出した。
そして――
その日を境に、デルワート村からオマリの姿が消えたのだった…。
それから7年の歳月が流れる――
最初のコメントを投稿しよう!