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ふわりと優しい午後の風が頬を撫でた。 木陰の下で瞼を閉じで、冷めない熱をどうにかしたいと考えていた。 「幸…怒ってる?」 ゆっくりと私の火照った頬を触り、買ったばかりのペットボトルを押し付けてきた。 「冷たい…」 笑ってみるも無表情の奥にどこかムッとした表情をしている気がした。 「朝から熱あっただろ」 いつもののんびりとした口調。無表情だけどちょっと怒っている。 「ほっへはひっぱらはいでー(ほっぺた引っ張らないでー)」 「無理したのはどこの誰?」 私はそっと視線だけ横に逸らす。怖い。ドカンと怒る人より何倍も怖い。 「ごめんなさい…」 「ん、良い子」 そう言って濡らしたタオルをおでこに乗せてくれる。 じわりと水の冷たさがおでこに伝わり、少しずつタオルにも熱が浸透していく。 「奏代」 「ん?なあに」 隣に座る幸を首だけ動かしてそちらを見る。 「もっと… 。いや、何でもない」 何かを言いかけて、一瞬だけ困ったような、悲しそうな表情をしていつもの表情に戻った。 「えへへ、そっか…。ねえ、幸」 本当は言いたい事分かってる。いつもそうだ。その言葉を飲み込んではそんな表情をして、いつも通りの幼馴染に戻る。 「何?」 そうやって、また無表情。 「手…繋いで良い…?」 トクトクと心臓がいつもよりも早く動いて、さっきまで聞こえていた校庭で遊ぶ生徒の声が聞こえなかった。 「ん…」 そっけない返事。 大きくて冷たい幸の手が左手の指先に触れて、優しく手を繋いでくれた。
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