2

5/10
2928人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 ほんのり汗ばんだ体が、覆い被さってくる。背中越しに感じる、輔の息使い。うなじに歯を立てられてキスをされた。  枕を一つ抜かれ、何故か目の前に置かれる。それを不思議に思いながらも、宛がわられた熱に意識を奪われた。  下着をまだ身に着けている輔の、薄い布越しに感じる熱。隆起したもので臀部を擦られて、耳朶を噛まれた。 「……いい?」  振り返ることはできなくて。顔は見ることができなくて。じわり熱くなる顔を耳に、額を布団へこすり付ける。小さく、本当に小さく、頷いた。  これで伝わってくれたのかは怪しい中、輔が自身の腰ひもを引き抜く音が聞こえてくる。衣擦れの音がやけに生々しく、心臓の音がとんでもなく鳴っていた。自分の鼓動の音なのに、まるで何かの楽器を聞いているようだ。   「息、吐いて。そう……上手だよ」  熱いくらいの熱が襞を割り、ゆっくり時間をかけて入ってくる。正直、最初に輔のものを見ておかなくて良かった。  入ってくるものの異物感が指とは比べ物にならず、めいいっぱい広がる襞は今にも裂けてしまいそうでかなりの痛みが走る。  体を強張らせた太一に輔は一旦挿入を止め、ガーゼ越しの屹立を扱きながらまた挿入してきた。痛みと快感とがない交ぜになって、太一は痛がっていいのか気持ち良くなっていいのかよく分からなくなる。 「っ、痛……ぁ」  奥へ奥へ入ってくる亀頭が、ある程度入ると完全に痛みの方が強くなった。それ以上を少しでも入って来られると、体が強張って動かない。 「……これ以上はまだ無理か」  独り言を呟くようにして、輔が太一の腰を撫でた。   「大丈夫。全部は入れないよ。怖くないからね」  熱く脈を打つ独特の感覚に、本当に輔が自分の中にいるのだと実感する。  顔が見られないのは嫌だったが、この方がおそらく体位的に楽なのだろう。輔が顔を寄せて何度も名前を呼んでくるので不安はない。ただ、やはり中を動かされるとどうしても異物感が勝った。  ゆっくりと、突き上げるのではなく弧を描くような抽挿。それでいて屹立の真裏にある性感帯にはだけは的確に擦り上げてきて、徐々に体が痛みより快感を貪り始める。  そうなると、太一の体は素直だった。 「ぁ。え……? ぁ、ン、ン……ぅ」 「ここ、好き?」 「ち、違……」 「違わないよね」  決して荒っぽくはないのに、そこばかり攻めてくる輔に太一の背がしなる。首筋を甘く噛まれて腰を使われ、太一の白い体が甘美に戦慄いた。決して荒い真似はせず、どこまでも太一を優先させる輔の動き。同じ男として想像できるのは、こんな生半可な抽挿では逆に輔が辛いだろうということ。 「……ごめん」 「どうして謝るの?」 「だって、僕が初めてだから……不慣れで」 「やだな、太一。当たり前だろう? そうじゃなかったら、俺は今ここにいない」  あまりに綺麗な笑顔で微笑むものだから、一瞬意味がよく分からなかった。  だが、だったらどこにいるのかと考えて、ハッとする。 「太一が他の奴とだなんて、想像もさせないで」 「っ……ぅ、ん」 「じゃあ、俺が刑務所に入りたくなるような言動は、もうナシだよ?」  これは、もしかしなくとも長いこと監視下に置かれていたらしい。まったく気づかなかった。首を縦に振り、とらえず輔の不穏な気配を削いでおく。  ニコニコと、作り笑顔を浮かべてキスをしてくる輔にせがまれ舌を出した。輔とのキスは気持ちがいい。幸せな気分になれるし、何より心が満たされる。そこに嘘は一つもなくて、太一は精一杯輔に応えた。  体格差があるためかキスをしながらでも中を的確に穿たれて、唇を重ねたまま甘ったるい声が鼻にかかる。 「舌、もっと出して……そう、もっと」 「ンぅぅ……ぅ、ん……ぁ」  差し出した舌先を吸われて、ゾクゾクした。枕で腰が支えられているから倒れ込むことはないが、支えが要らない分輔の両手は胸に伸びて淡い突起を甘く(さいな)められる。  乳首だけを抓まれて、クリクリと左右に弄られた。それがとにかく気持ち良くて、少し強めに弄られるたび中の輔のものを締め付けるほどだ。 「乳首好きなの? 気持ちイイ?」 「……ん、……ぃ、……い……」 「こうやって抓んでクリクリされるのと、先を爪で引か掛かれるのどっちが好き?」 「ぅンンっ、ぁ、それ……っ、ぁ……アッ」  人差し指の爪先がカリカリと乳首の先を引っ掻いて、太一の声が一際大きくなる。輔が心得たように何度も何度も引っ掻くので、薄く色づくだけだった突起が赤く熟れた小さな果実のようになってしまった。 (ン……)  偶然、枕と枕の間に勃起した屹立が入ってしまう。  布の中でローションにまみれた屹立がなんともいえぬ刺激を受け、腰が自然と揺れた。 「そんなところで一人遊びか。妬けるなぁ……」 「あぁぁっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁぁ……っ」  中を強く穿たたれ始めて知る、独特の快感。熱い。舌を吸われる感触とも、突起を引っ掻かれる感覚とも違う。刺すような快感がたまらなくて、口がだらしなく開いたままになる。これでは駄目だと口を閉じても、どんどんピストンが速くなって前立腺をゴリゴリと抉られる快感が圧倒的な支配を生んだ。  何かを目の前の枕の上に置かれる。黒光りするそれがカメラだと分かった時は、既に赤いランプがついていた。  赤い乳首を引っ掻かれながら中を穿たれ、背が快感に反る。屹立は枕の間で淫猥に震え、こんな顔撮られたくないのに揺すぶられると顔が伏せられない。  水音が恥ずかしいくらいに鳴っていて、その激しさに耳が犯されている気分だった。 「さっきより中、熱いね。ヒクヒクしてて、気持ちいいよ」 「た、す……く……ぁ、っ、ぁ……ぅ」  後ろから抱きしめられて味わう、輔の体温。こめかみにキスされて、耳、首筋、うなじと次々舐められた。そうされるたびに中を締め付けてしまい、輔の吐息が快感に濡れていく。 「奥までいけそうだな……」 「……え?」 「ううん、なんでもない。太一、愛してるよ」  よく聞き取れなかった台詞は軽く流されてしまい、しかしこれを聞き逃すべきでなかったことを十分後に身をもって痛感することとなる。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!