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あずみの引きこもりがちの毎日に、色彩が戻ったようだった。第一志望に合格したものの、何かに気がひけて、いつもうつむき加減だった自分。実際、本当に笑ったのは、上京して以来初めてだったのだ。
彼の斬新なファッションは、いつも刺激をくれた。自分にはまねできないけれど、ハッとするような色の取り合わせ。アクセサリーの合わせ方も秀逸。
あずみは箱のような自分のアパートで姿見を見ながら、もし自分がそういうファッションをしたらどうかと想像した。そして時にはため息をつき、時にはわくわくするようになっていた。でも手持ちの服は黒やグレ-のオーソドックスなものばかり。だんだん、実際に着てみたくなってきた。
「明日ユニクロに行こうかな?」
ユニクロでも探せば少し斬新なものが見つかるような気がする。バイト代も入ったことだし、とぼしい服のレパートリーを少し増やしてみようか? すぐに自分でその気になっていた。そしてにっこり微笑んだ。
「あれ、伊藤さん、なんか雰囲気変わったね。似合うよ、そのTシャツ」
語学の時間のとき、同じクラスの古川久美に声をかけられた。久美は東京出身の子で、明るい性格だ。
「そうかな? 変じゃない?」
おずおずと教室に入ったばかりのあずみは、なかば期待を込めて聞き返してみた。おとといユニクロで買ったショッキングピンクにラメで英字が入ったTシャツ、白いフレアスカート。ピンクを着たのは人生で初めてだったのである。
「いい色! 私も欲しいな!」
いい色……。私も欲しい……。いかにも都会っ子らしく肩に力の入らない、けれど洗練された服装の久美に言われると、悪い気はしない。
「……ユニクロなんだけどね」
謙遜のつもりでいいながらも、あずみは顔がほてってしまった。
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