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母の思い
『母が亡くなった』当日の先生が運営している病院に、私は向かっていた。
「当時の担当医をされていた院長に、母の事が知りたいので合わせてください」と受付でお願いした。
しばらく受付で待っていると、診察室に通された
「たしかにあなたのお母さんは、十五年前に亡くなられています。しかし亡くなられる直前少し気になることがあって・・」
当時担当医だった院長は、その時のカルテを見ながら、母の残した言葉を話してくれた。
「私には、ひとり息子がいます。私には両親も祖父母も兄弟姉妹もいません。あの子が家庭を持って、生活が出来るまで、私は生きていたい、あの子の結婚式をみたいんです。」
母は院長の診察中に、何度かそう言っては、寂しそうによく、天井をながめていたそうだ。
「あなたのお母さんは、ご自身の病気の事を知っていて、息をひきとる直前までそう願っておられたよ。」
「そう、とても小さい声で、突然あなたのお母は目を開けて、話した言葉が不思議だった。」
その言葉とは「あなたの結婚式をみることができたからもう大丈夫よ。」だった。
私は、その言葉を院長に聞いてすぐ後、母の葬式の記憶が頭によみがえってきた。
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