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本当の事
『私には見える、母と一緒に写っている』
母が十五年前に入院したことは、確かにあったが、元気になって退院してきた。
運動会も、母と一緒にお弁当を食べている。
学校参観日も、きてくれた。
私は、覚えている。
高校、大学の進路相談も一緒に行ったと、覚えている。
小学校当時担任の先生に確かめようと思い、すでに学校を引退された先生のお宅に連絡した。
「先生、突然お邪魔してすみません、これは私が小学生の時の運動会で、お昼を母と食べている写真です。」
すると先生も、申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい、私にはあなたしか写っていないように見えるの」
「ただその運動会の時は、とても不思議と思ってみていたの、あなたが手作りのお弁当を独りなのに、まるでお母さんと一緒に食べているように楽しそうにしていたから。」
「そうこの写真は、まるで隣に誰かいるように写って見えるわ。」
先生は、そう言いながら私にアルバムを返してくれた。
私はまだ信じられなくて今度は、中学3年生当時の担任の先生に会うため、今先生がどこにおられるのか、学校に電話で問い合わせてみることにした。
すると今も同じ高校にお勤めで、部活中の生徒を見守り中とのことなので、行ってみることにした。
高校のグランドで先生に声をかけた。
「先生、私が中学3年生当時、母と一緒に進路相談のお話をしたと思うのですが・・・。」
そう話しはじめたら、先生は直ぐ申し訳けなさそうな顔で私に言った。
「あなたのお母さんが、随分前に病気でなくなられていたのは知っていました。」
「三者面談でも、まるでお母さんと会話して面談を受けているような・・・。」
私は先生が当時、気を使ってもらっていた事に礼を言って、すぐ立ち去る事にした。
『皆、芝居をしてくれていたんだ。』
私は、そんな皆の思いがうれしいのか、くやしいのわからなくなってきた。
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