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母は何処に
私の結婚式の翌日、母が台所でたおれた。
すぐ救急車を呼おうと、私は携帯を探した。すると、母は私の方に目を向け、ほほえみながら言った。
「あなたの結婚式をみることができたから、もう大丈夫よ。」
そう言って母は、静かに目を閉じた。
気がつくと、私はテーブルに座り妻を目の前にして夕食を食べ終わっていた。
さっき『母がたおれた。』台所に目をやるとそこには、だれもいなかった。
私は母が台所でたおれたこと、救急車を呼ぼうと、携帯を探そうとしていた事を妻に話すと、妻はかなしそうな顔で私に言った。
「そうね、あなたのお母さんが亡くなられてからちょうど十五年になるわ、今日がその命日ね。」
妻はそう言いながら、タンスに立て掛けている「母の写真」に目をやった。
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