突然の始まり

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「な、なにしてんのっ」 陸矢のさらさらした前髪が首筋にかかる。  かぷっ―― く、首っ。 「ドラキュラしないっ」  振り向いた瞬間、陸矢の瞳が目の前に飛び込んできた。いつも笑ってる陸矢の刹那い瞳。  固まった―― 初めて見た陸矢のそんな表情。  あと五センチ。唇までほんのわずかな距離。整った甘い顔立ち、潤む瞳に吸い込まれそうになる。   「忘れる方が悪いだろ」   掴まれた腕が離されて、その指は唇をなぞる。壊れ物を扱うように優しく。愛おしむように。     え――っ  距離は消える。唇がふれて……る。 「思い出した?」 上唇に下唇に、そっとふれるように。陸矢の熱い吐息がかかって鼓動がどんどん高鳴っていく。   誰かに抱きかかえられてた。酔ったわたしを背負った強くて暖かい腕。首にしがみついて困らせた。   「迷惑かけすぎ。ごめんね」 なんとなく思い出した、そこまでは。だけどなぜ、こうなるっ。
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