突然の始まり

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「……惚れた?」 悪戯な笑顔に胸がぎゅっとしてドキドキが止まらない。湊斗(みなと)に失恋したばかりだというのに。 「ほ、惚れてないっ」 これはなに? ふれられたところから優しさが広がっていく。身体中に染みてくる愛しさに似た想い。 「惚れなよ」 陸矢から目が離せない。   『瑠香が好きだよ』  記憶の中に残る声。照れた表情で見つめていてくれた。思い出してきた告白。   火を吹いた、顔から。全部思い出した――!    私達まだなにも始まっていない。酔って脱ぎ散らかしただけ。 「陸矢騙したっ」 あんなにかぷかぷとっ。てっきり…… 恥ずかしくて消えたい。 「嘘なんてついてないよ」 陸矢の言葉に堕ちて行く。  抱きしめられて、甘い口づけを避け切れなくなる。声が静かに耳に残る。  好きだよ―― 
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