雨上がりの勇者

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雨上がりの勇者

―1― *とりゃーー!ファイナルバーニングアタック!! *甘いわ!食らえエクスカリバー! *ガキーン!ガキーン! *ぐわっーーー!!  雨上がりの放課後、アスファルトの水たまりの上で死闘を演じる男子たち。  一足先に大人になった私たちと、いつまでも子供っぽい彼ら。その距離間が開いていくことが、本当は少し寂しかった。  あなたはいつも負け役だったね。ヘンテコな必殺技を叫びながら、何度も勇者に立ち向かっては、大袈裟にやられたフリをして。  主役ではないのに誰よりも楽しそうで、誰よりも眩しかった。  そんなあなたが好きでした。 ―2― *えいっ! *フッフッフッ、まだまだ子供よのう! *やぁっ!! *やーらーれーたー! 「こらっ!傘を振り回したら危ないでしょ!」  あなたはバツが悪そうに頭をかいて 「大魔王様がお怒りだ!今日はここまでにしておこう」 とイタズラっぽく言うと、息子の頭をポンポンと撫でる。  結婚しても、あなたは子供で。  父になっても、相変わらず負け役。    その手には勇者の剣はないけれど、毎日、社会と戦って。傷つくこともあるはずなのに、何度でも立ち向かう。  誰よりも眩しい、私たちの勇者。  私の大好きな人。 「カバンにお弁当入れておいたよ。あと、折りたたみ傘も」 「うん、ありがと」 「悪い人がいたら、それでやっつけてね!」  あなたは一瞬キョトンとしたけど、いつもの笑顔で言った。 *ああ!ファイナルバーニングアタックをお見舞いしてやるさ! *だから安心して待っててな。お姫様。  
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