🍀はじめての友達🍀

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「それでは」と、ピーターはひとつ咳払いをすると真面目すぎる表情で話し始めた。 「そもそも僕の作戦は、ヤツの鼻面に噛み付いて撃退するという至ってシンプルで尚且つ確実にダメージを与えると言うものだったのさ」 「この作戦を成功させる鍵は何といっても最初の着地に全てがかかっていた。 何故なら不意を突かれた敵が驚きの余り予想しない動きや力を発揮して、結果僕が振り落とされてしまってはその時点で作戦は失敗を意味するからね」 「だから僕は着実に奴の頭上に狙いを定め素早く着地し同時に振り落とされない様にしっかり頭を掴んだ‥ 正確には掴んだはずだった‥なのに動くはずの無い奴の頭皮が段々ズレてくる」 「不意を突かれたのは奴も僕も同じだった。 驚いた僕は未確認物体の黒モフを驚きのあまり高く放り投げて素早くその場を一旦離れようと駆け出した」 「ところが、放り投げた黒モフは綺麗な放物線を描きながら走っていた僕の頭にスッポリとはまってしまったってわけさ、正に何かの計算式の様にね」 「日頃冷静な僕にしては珍しく慌てた。 わずかに見える隙間から逃げ場を探す。 そして、そこにたまたま都合よく止まっていた車の下に潜り込んだ、追いかけてきたあいつは腹這いになって僕を捕まえようと車の下に潜り込む、そこで隙を見てヤツのツルツルのオデコに渾身の一撃をお見舞いしたって訳」 ピーターは学者みたいな身振り口ぶりで面白おかしく説明した。 私はそれが可笑しくってずっと笑っていたけれど、それはピーターが無事で良かったと安心する気持ちがおおいにそうさせていると感じていた。 それにしても知らない何者かが一方的に大事なテリトリーに土足で踏み込んで汚そうとするなんて、こんな卑怯で許せない事はない。 今回はまだ見える敵が相手だったから戦い方はあった。戦う事が出来ただけマシかも知れない。 私達の生き方は至ってシンプルだ。 不必要に相手を陥れたり傷つけたりはしない。 人間はどうなんだろう‥ 「ねえ!きいてる?」 ピーターの声で私の考えは中断した。
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