🍀 M I E L 🍀 小さな猫のおはなし

🍀 リョウと仔猫 🍀

車の振動が伝わってくる。

お母さんは何処かな‥

私はお母さんのミルクの後、近所の山田さんが用意してくれた山盛りのご飯を皆んなと競争してお腹いっぱい食べた。

毛繕いしながらウトウトしていると突然私達は柔らかなタオルの敷かれた段ボール箱の中に入れられた。
それまでの夢見心地はいっぺんに覚め、驚いた皆んなは上へ下へと揉みくちゃになりながら騒ぎ出した。

お母さんの心配そうな声が聞こえる。

その声に応えようと私も必死で鳴き声をあげた。
けれど、その日珍しく皆んなと追いかけっこをして疲れていた私は何しろとても、とても眠くて‥

お母さんの声が段々と小さくなって行く。

ダメだ‥今眠ってしまったらもうお母さんには会えなくなってしまう‥

「独り立ちする時が必ず来るわ‥それも、もうすぐ」
数日前そう言ったお母さんの横顔が蘇った。

私はふわふわとした感覚でお母さんと過ごした日々を夢の中でぼんやりと思い出していた。

お母さんは野良猫としてひとりで生きてきた。
人間の事は警戒していたけれど私達兄妹を産んでからは少しずつその距離を縮めていった。

それは近所の山田さんが私達にご飯をくれる様になったからだ。

「独り立ちする時が必ず来る。
でも私達猫が野生として生きて行くにはこの世の中は過酷な事が多いわ、私達は本来の野生の部分を大切にしながらも太古の昔から人間と共存しながら不思議な関係で生きて来たの。
それは他の動物では築き上げる事の出来ない不思議な関係よ。
もし信頼できる人間と巡り会う事が出来たなら‥それはきっとお互いに素敵なパートナーになれる」

お母さんはいつになく少し寂しげに見えた。

皆んなが泣き疲れて眠る小さな箱の中で、私はいつしかすっかり目が覚め、遂にその時が来たのだとひとり確信していた。