🍀 M I E L 🍀 小さな猫のおはなし

🍀 リョウと仔猫 🍀

俺の母親、ケイは大の猫好き‥
いつもテレビで世界の猫の番組をにやにやしながら見てる‥

「もし猫を飼うとしたら‥黄色いトラ柄の猫‥
名前はサフラン‥どぉ？可愛いよね‥」

テレビから目を逸らさないまま仕事から帰ったばかりの俺に言う。

テレビはちょうどトルコのイスタンブールの猫を紹介していた。サフランと言う名の黄色のデカい雄猫が香辛料屋の店先でゴロリと横になっている場面だった。

俺はひと息置いて

「そう言えば少年団の親御さんの所に野良猫が仔猫を六匹も産んだんだってさ‥里親がいなくて困ってたよ‥‥‥飼ってみる？」

俺は出来るだけ、さり気なさを装って軽い口調で言ってみた。

「‥いやぁ‥そんなの無理無理‥‥飼えないから‥」

即答だ。なかなか手強いな。

俺は子供の頃からサッカーをやっていた事を職場の人に見込まれスタッフの一人として低学年の子供達を担当している。

ケイが猫を飼いたい気持ちを持ちつつも中々踏み出せないでいるのには四年前に亡くした愛犬の事が未だに尾を引いているからなんだ‥

でも‥ここは強引に仔猫を連れて帰れば‥
ケイの事だから突き放したりはしないだろう‥

ケイは動物好きだ。
哺乳類や猛禽類の生態の記録番組を飽きる事なく見てる。そして厳しい自然の中で独り立ちする前に命を落としてしまう場面など見てはすぐ泣く‥
でも番組が終わってしまえば何事も無かったかの様に、くだらない事でよく笑う。
全く‥息子としては呆れる‥

親子二人でこの田舎に越してきてもう四年、ケイには夢があり、その目標に向かって毎日生き生きと暮らしてはいるが、何か新たな生きがいがあればもっと肩の力を抜いてより楽しく暮らせるんじゃないか‥

「やっぱり‥そうだよな！」

俺は一人ニヤリと笑った。